2004'12月 作品発表
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連詩 「氷原」 2004/12/23
この広い氷原に二人きり
寒さに凍えながら、まわりを見回している
もし一人なら、どうするだろう
二人いるから、平気なんだよね
君は答えないけど
君の手のぬくもりが、答えているから
僕は満足さ
ここから始めて、どこへ行くのか
それが僕らの将来なんだよねって
そう思った
rem
抱きしめて 温めあえる
ぬくもりを 感じられる
幸せの意味 やっと わかった
ごめんね
まわりみち いっぱいしちゃった
やっと たどりついた
あなたに たどりついた
つないだ手 もう はなさない
永遠に明けることのない闇夜も
二人で こえていこう
冷たく閉ざされた氷原の未来も
二人で 歩いていこう
もう 怖くない
Trill
そう
見渡すかぎりの枯れ野だった
荒れ狂う風になぎ倒された草花はしおれ
立ちすくんでいる私のうえに
音もなくふり続いた幾千万の雪
このまま 凍りついて
何も感じなくなくなれば
すべてを忘れてしまえるだろうか
ただ
このまま眠る前に
乾ききったのどをひととき潤してみたかった
凍えた指でゆっくりと
白銀にうもれたていた一瓶の名もなき酒の
封を開いた
ああ、
私はまだ動けるのだ
盃の水面にあなたの面影を浮かべ
唇を開くことができるのだ
のどを滑り落ちるしずくが
醒めた夢を追う心に届くころ
肌を覆う暗闇と冷気は
あなたの熱い吐息に変わっていく
いつのまにか微笑んでいた
氷原に青い炎が広がっていく
このまま しばらく眠ろう
この凍てつく大地が
ふたたび みどり萌える世界を見る
その時まで
marie
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連詩 「クリスマスの夜」 2004/12/18
ツリーの一番目立つところに あなたが 吊り下げた
ちいさな ゆりかごの飾り。
優しくゆれる 金色の文字
「Baby's First Christmas」
今年はこれで我慢しようね、僕もつきあうからと
お子様向けのシャンパンを 二人であけた。
甘ったるくて 大人の私たちには 不味くて 笑っちゃうけど
子供の頃は とても特別な飲み物だったね。
これからは 毎年買うことになる、きっと。
おなかの赤ちゃん、きこえてるかな
君のパパは 世界一のサンタさんだよ。
Trill
雪が降ってほしい・・・
その日の足音が聞こえ始めるころ
なぜか思うこと。
なにかを願う・・・
幸せを予感するときは
必ずそうだった。
いま
なにも欲しくないのは
満たされているから。
そう
幸せの金盃には
喜びも悲しみも満ちる・・・
愛する人よ
ワインを今宵
あなたとともにあけよう。
marie
君がいてくれたら、クリスマスの夜もきっと楽しいだろう
君がいてくれたら、僕は幸せだろう
今は、君からの電話を待っている
どうなるか、わからないけど
君の笑顔をみると嬉しくなるんだ
だから、今年のクリスマスは、君と一緒に過ごそう
世界一のサンタも、ワインも、君のためになら用意できるよ
電話番号を渡した昨日の夜に、君の心は聞かなかったけど
僕の心は、もう決まっているから
僕と君のメリークリスマス
rem
.//
連詩 「薄氷(うすらひ)」 2004/12/12
長いあいだ悩み続けた気がしていた
でも、それは、たった一夜のでき事なのかもしれないが・・・
てらてらと凍りついた池のほとりで
明けの光を浴びながら、ひらりと落ちた桜の葉を見ていた
雪にまみれ、凍りついた桜に触れてはいけない
あなたの温かさに花びらは融けてしまうから
陽がのぼり、生き返るのが花の強さ
薄氷に乗り、くれない色を封じようとする葉に触れてはいけない
あなたの身が水の冷たさに凍えてしまうから
陽がのぼり、沈みゆくのが落葉のさだめ
長いあいだ悩み続けた気がしていた
あなたの腕に触れ、その視線に身を横たえるまでは・・・
marie
一面に薄氷が張り詰めた湖のほとりに
森の妖精が現れて こっちにおいでって 手招きしてるみたい
昨日まで悩み続けたことも 春が来て氷が解けるように
いつの間にか 跡形もなくなってしまうんだろうネ
あんなに何を悩んでいたんだろうって 不思議なくらい
つらかったことも 時間が経てばいつの間にか 消えてしまうんだろうネ
いつも 大きな自然は 何も問いかけず 何も答えず 何も語らず
じっと みんなを 見守っていてくれるんだろうネ
また こうして 一年がいつの間にか過ぎて行く
また こうして 季節が移り変わって行く
まるで 今まで何事もなかったかのように
キキ
川のほとりで、空を眺めていた
凍ることのない、川の水面に
移りゆく時を感じながら
明日になればと、明日を待つけど
いつかは、いつかのままで
僕は漂いつづける
子供の頃、氷の張ったバケツで遊んでいた頃に
君と出会えればよかった
そんなことも、思ったりする
今の僕に、何があるんだろうと、考えてみたりもするけれど
結局、答もなく、ただぼんやりと、空を眺めている
やってくるのは、ただ、明日
薄氷が張る、春の頃には、僕も変わっていたらいいなと
氷がとけるように、明日の景色が変わっていたらいいなと
そう思いながら、冬を待つ
ただ、空を眺めている
rem
あの日。
どうして。こんなにも苦しいのに。
鼓動も 呼吸も 止まることはないのだろうと
そんなことを ぼんやりと考えていた。
薄氷の張る湖水をわたる風に このまま吹かれていたら
凍ってしまえるかしらと そんなことを 思っていた。
不意に 目の前に現れた貴方が
水溜りの氷に 滑ってしりもちをついて
照れたように 笑ったのに
つられて 微笑んでしまったのよね。
貴方は教えてくれた。
この世に 生の溢れていることを。
木も花も 鳥も虫も
名前を得て 息を吹き返した。
暑いのは苦手だからと
雨の季節に去っていった貴方。
ねぇ。
もうすぐ 白鳥が帰ってくるわ。
狂い咲きの桜は、貴方の好みじゃないかもしれないけど。
もう一度 会えたら。
もう 迷わない。
Trill
.//
「薄氷」言葉の通り、薄く張った氷のこと。
連詩 「機械たちの時間」 2004/12/10
海風を懐かしむ
私は機械
もう凪に打たれることはない。
行けない場所 行けない時間
そしてえいえん。
わたしが錆びるとしたら
あなたが私を捨てたとき。
廃材置き場でえいえんに
あなたの夢を瞬膜で見る。
ぶらうん
例えば、あなたがあなたであるように
どんな機械も、意思を持っているとする
私にかわいがられる機械も
打ち捨てられる機械も
みんな同じ時間を過ごしている
そこで、みんなで考えたのは、何の話だったか
機械には機械の時間が、流れていると
人間には左右されない、絶対的な基準があるんだと
機械たちは そう言いたいのかも知れない
rem
連詩 「陽だまりの中で」 2004/12/10
冬の柔らかな陽射し
そのぬくもりの中で
猫が昼寝をしている
今日は暖かな午後
ふと休憩をして
我に帰る
いつもこうでありたいな と思う
こんな午後に こんな気持ちで
rem
柔らかな日差しの中 寄り添う老夫婦
手をつないで歩く散歩道
いつかあなたと寄り添い歩ける日々を夢見てる私がいる
そんな日がくるのはいつのことなんだろう
さや
ボクは心地よいポッドの中で
じんわり死んでゆく
割られなかった卵
温められなかった卵の中で
ゆっくりと朽ちていく
誰が僕の夢を知るだろう
誰がぼくを知るのだろう。
あたたかな子宮の寝床で
あたたかな死の夢を見る。
ぶらうん
連詩 「雪の華」 2004/12/10
あなたが 歌った雪の華 私の心に響き渡る
いつもどんなときでも貴方の事守りたいと思う私がいる
そんな私にあなたは気づいてるのかな
さや
雪に染まったかなしみがやってくる
雪に隠れたかなしみがやってくる
このときの空に咆吼する
言葉が落ちてくる
そして悲しみが
あとから私を濡らす
知らない人いきれの中で
気付いたら肩に悲しみが落ちていた
ぶらうん
ほんのりと溶けて、消えていった
肩の雪は、貴方がはらってくれた
こんなに幸せなのに
いつかは消えるんじゃないかと、怯えている
そんな私に
貴方がいれば幸せなのと、そう問いかける
空が、そう聞いている
だから私も、また歩いて行けるのかな
貴方とともに
rem
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